わがまま放題

 

部屋を出るとき

いつも私はあの人を置いて行く

 

ある時は黙って部屋を出る

 

またある時は起こして

チェックアウトの時間だけ言い残して

部屋を出る

 

いつも思う

なんで一緒にいられないのだろう

 

仕事なんか二の次で

この人と一緒に過ごそう

そんな時間にしたいな

 

考えてはいるけど

やっぱり行かなきゃ

一緒にいる時間を諦めて部屋を出る

 

だってあの人もきっとそうする人

 

あの人は何も知らずイビキをかいてる

馬鹿だなと思い部屋を出る

そんな私が1番馬鹿だなと思う

 

なんで気づいてくれないの

寂しい気持ちも入り混じる

マーブル模様のように複雑で

でも個々の色はハッキリしてる

 

もう終わりだ

 

直感で感じる

 

何度もそう感じてるのに

何度も繰り返してしまうのは何故だろう

 

何ももらえないのに

何もあげられないのに

気持ちも思いも同じじゃないのに

すれ違ってばかりいるのに

めんどくさいのに

苦しいのに

 

やめたいのに

やめられない

 

ただ寂しさを紛らわす

 

そんなくだらない理由

 

ある時抱きしめてとお願いした

急にどうしたのと笑われた

 

おいでと両手を広げるあの人の

胸に飛び込んでこれでもかと抱きしめた

 

抱きしめて抱きしめて

抱きしめて潰したい

抱きしめられて潰されたい

 

液体にして身体中に染み込ませたい

体内に埋め込まれたい

もしくは飲み込んでしまいたい

 

背骨が折れるまで抱きしめて欲しいと

息ができなくなるぐらいまで抱きしめて欲しいと

私は言えなかったんだ

言ったらいけないと思ったんだ

 

なんだか泣けてきて

涙が止まらなくなった

声を殺して

息も殺して

どうして何も言ってくれないの

 

私は貰わないとあげられない

愛なんか何も貰ってないのにあげられない

愛されてる実感がないのに愛せない

好きと言われてないのに言えるわけがない

 

私は無償の愛なんか与えられないし
誰にでも平等に接するなんて無理だし
優しくされた分しか優しくできないし
言ってることとやってることチグハグだし
気分屋でコロコロ変わるし
自分がされたら嫌なことも平気でするし

思ってもない事言って人を試したりするし
息して生きるのと同じくらい当たり前に
嘘ついたりするし

思ってもないことなんかスラスラ言えてしまうし
自分のことすぐ棚にあげるし
とりあえず謝ればその場が収まることも知ってる

 

そんな自分を伝えられないくせに

なにがありのままを愛してだよ

ふざけるな私

甘ったれるな私

 

私が言葉でもわからないなら

相手なんかもっとわからないだろ

 

そんなことが頭の中ぐるぐるかけめぐって

目頭が熱くなってきて

目を閉じたら大粒の涙が出てきた

 

なんで泣いてんの?

そっとゆっくり頭と髪を撫でてくれて

なんだか虚しくて悲しくなって

わからへん

とだけ答えた

変なの

あなたは寝ぼけながら笑ったけど

わかってほしかった

 

言葉にしないと分かるわけないのになぁ

言葉にされても分からないことだらけなのになぁ

 

わからへん

じゃあ他人にもわかるわけないよ

わからへんって言葉にしても

伝わるわけないよ

 

わからへんのかぁ、そっかそっか

話してくれてありがとう

 

どのへんがわからへんのかわかる?

 

そんな気の利いたこと言える人なんかいないよ

そんな私のわからへん気持ちを

一緒に時間をかけて探して見つけて解決して

そんなことしてくれる人なんかいないよ

 

わからへんのが

わかるようになるのはいつだろう

 

わかってるのに

わからへんって言ってしまうのは何故だろう

 

わかってるのに

わからへんって言わなくなるのはいつだろう

 

誤魔化さなくなるのはいつだろう

 

めんどくさがりにもほどがある

なのに欲しい欲しいって

わがままだよな

そりゃあ、わがまま放題って言われるわ