シャットダウン
強制終了ブラックアウト
さよならあなたはゲームオーバーです
コレカラモ、ツヅケマスカ?
▷ハイ
いきなり思考が止まり、なにも考えられず、なにも思えず、なにも感じずただただ立ち尽くして目を閉じた
その日は一言も発さず誰とすれ違おうともどんな異臭がしようとも目的地に向かっていた
暑くても寒くても空腹なのかも味覚もバグって無心でただただ寝る場所のある家に帰った
本来ならば選べる拒否権このゲームにはない
その日もいつもと同じように主人公はシャットダウンしたのだった
なにが発端なのか
頭の中が心の中が身体中がぷつんと切れて全てが終わる音が聞こえた
円滑に動けるように切れたところを縫い合わせて油をさすのが毎日の習慣だったがその日はやめた
▶︎ハイ
次の日身体は錆び付いていていつもより時間がかかる
ギシギシ軋む身体は凝り固まってうまく動けない
いつも使う経路には間に合わない
いつもの経路使えずいくらか課金して別の経路でまた目的地へ向かう
なぜだろうかなぜ私はこんなことをしているのだろうわからない
なぜ▶︎ハイを選んだのかそれしか選択肢がないからだ
主人公の仲間が現れ一緒に冒険の旅をするのがセオリーだがそんなものはいない私1人だけだ
前にもこんなことあったないつだっけな何度かあった
その時選ぶのはもう続けない続けられない▶︎イイエの選択肢
この世界は逆でむしろ▷ハイがない▶︎イイエしかない
もう無理だと思ったのだ頑張りようがない疲れ果ててしまったもう誰もそばにいて欲しくない
▶︎イイエ以外の選択肢が見えない聞こえないわからない
ほんとうに?と目を見開く。事態を深刻化させないように胸糞悪い気持ち悪いスタンプ絵文字も一緒に送られてくる
深刻化したくない私はヘラヘラ笑う。もうどうでもいいやと関係ないスタンプ絵文字を送る。
察したようにタバコをふかしいいよとため息混じりに答えた。なんでもないただただ既読がついた。
もう戻れない。もう手遅れで、証拠なんてないけど私のカンがもうやめとけとそう言ってる。これでいいのだ。やっと私の中の不純物が消える邪魔で邪魔で仕方なかった付録とそれに伴うたかが付録に振り回される感情もなくなった
口をぽかんと開け呆然と立ち尽くす奴もいた
もう関わりたくないからその場から早く出たかったからお金を置いて店を後にした事もあった
お金も置かずに出て行った事もあった
その後そいつはどうしたのか知らない
どいつもこいつも金がないだの時間がないだのピーピーうるせえやつだった
どうでもいいわじゃあ切れよと思ってたから切ってやったわさようなら感謝しろよむしろ私に土下座しろ
もう一切好きじゃなくなった。お気に入りでもなくなった。お気に入りの毎日一緒に寝てたクマのぬいぐるみから忘れ去られる箱に葬られたいつ捨てられてもいい箱。箱があるだけで不愉快だが可燃ゴミの日までの辛抱だ。
いつからだろうか初めからかもしれない時間とお金と私の気持ちの無駄だった
忘れられない人なんてほぼいないだいたいのやつはすかんすこんとすっぽりさっぱりきっぱりきれいに忘れる。こんなやついたなあこれを書きながら胸くそ悪い思い出かき集めてる
シャットダウンしたから余計に後味悪いやつばっかりだないい思い出なんかあるのだろうか
布団にくるまってそっとスマホのロックをかけた。気持ちを軽んじてるつもりはない。でも、もうシャットダウンしてしまったのだ。今日は誰にも何にも邪魔されず心地よい夜風に酔って眠りにつけそうだ。
大好きで大好きでたまらなかった人間を、大好きで大好きでたまらなかったぬいぐるみをあっさりと忘れる。あんなに頼ってた頼られてた人間を、毎夜抱きしめないと眠れなかったぬいぐるみをあっさり忘れる。男も女もモノも性別関係なく突然どうでもよくなる。名前すら思い出せない、写真見ても、データを見てもコレダレ?記憶から抹消されている奴さえいるだろう
抱きしめないと眠れなかった頼れなかったのは錯覚だったのだ
ほらなくなった今でも
私の人生に支障はない
シャットダウンしたのは私の方でブロックしたのも私の方で向こうにとってはどうなのだろうか
もういいんだゲームオーバー
続かなくていいよこっちの方はもう二度と
もうほんとうにつかれたの
もう一つの世界では、
▶︎ハイしか選べない世界では、いつになれば
▶︎イイエを選べるようになるのだろうか
私はゲームの主人公か
はたまた全知全能の開発者か
マリオなのかピーチ姫なのかクッパなのか
はたまた開発者任天堂か
操作する側?される側?