まる
まるを描くのがクセだ
一発で綺麗なマルが描けると嬉しくなる
コンパスで描く円とはちがう
ちょっと歪なマル
歪だけど綺麗なマル
ボールペン、シャーペン、えんぴつ、マジック
フリーハンドで描いてみたり
パンチで穴を開けたマルに沿って描いてみたり
ぐるぐる描いてだんだん綺麗な形に整えていったり
ぐーるぐーるぐーるぐーるグルグル
描いてなぞって
中が真っ白な時もあれば
真っ黒に塗りつぶしてみたり
グルグルグルグルどんどん小さく描いてみたり
マルの中に沢山のグルグルを描いて
グルグル詰め込んでみたり
マルを沢山詰め込んでみたり
とりあえずずーっと暇さえあればマルを描いている
高校生の時もノートの四隅に描いてみたり
机にシャーペンで描いてみたり
教科書プリント、文章で目につくマルに
ただただマルをつけて、マルの数を数えてみたり
大学で授業を受けてた時なんかレジュメがマルだらけになって読めなくなった時もある
流石に友達に見られたらやばいやつだと思われるから
隠してたけど
家で消しゴムで全部消してみたり
無くしたフリしてコピー取らせてもらったり
なんでマルがいいんだろう
どうしてコンパスじゃダメなんだろう
シカクやサンカクじゃなんでダメなんだろう
ずーっと思ってた
やっと気づいた
このままでいい
なにも武器を持たないままで
なにもないままで
誰かに認めてもらいたかったんだ
誰かに許してもらいたかったんだ
私自身が私を許せてないから
ずっとずっと許してるフリしかしてないから
呆れてしかなかったから
マルが欲しかったんだ
100点でもハナマルでも
たいへんよくできましたでも評価が5でも
秀でもA +でもなくSでもなく
なんてことないただのマルが欲しかったんだ
やっと気づけた
許してあげられなくてごめん私
気づかなくてごめん私
暇がしんどくて
暇に殺されてて
でもまぁ暇もいいかって
時間の浪費が1番の贅沢じゃないか
力が溜まるまで暇でいいや
その内上に上がる
ほっとけば底なんか見えないぐらい
いつしかの元気だった私に戻れる
時が経てば
春が来れば
夏が来れば
秋が来れば
冬が来れば
来年になれば
だから今のままでいいんだよ
あれから何回季節が巡ったの
どれだけの時間を無機質に過ごしてきたの
無駄にしたなんて思いたくない
でも貴重な時間、一生に一度しかない時間
その時しかない時間無駄遣いしてた
全然良くなかったんだね
今のままででいいなんか嘘だったんだ
嘘ついてばっかりで
騙し騙し誤魔化し誤魔化し其の場凌ぎ
魔法をかけて
魔法なんていいもんじゃない
呪文をかけて
呪いをかけて
暇が1番嫌いで
暇な時間に殺されるんじゃなくて
暇な時間ができないぐらい動きたい
暇を殺したい
時間の浪費が1番無駄なことだって知ってて
力も有り余ってるんだ
力がこれでもかってぐらい溜まってて
発散の仕方がわからないんだ
そのうちなんか待ってられない
時間は有限だ
私は今すぐ私にマルをあげて
綺麗なマルじゃなくてもいい
ぐーるぐーる歪なマルでもいいんだ
不完全でいいんだ
中がぐちゃぐちゃでもガチャガチャしても
グルグルだらけでも真っ黒でもいいんだ
マルが欲しかったんだ
許せなかった自分を許してあげたかったんだ
やっとわかったよ
気づいてあげられなくてごめん
何年かかっただろう
「マルが描くのがクセなんだ」
「綺麗なマルをかけると嬉しいんだ」
「よくわからないけど気づいたらマル描いてる」
私が欲しかったのはこれだ
「素晴らしい、ひゃくてん、はなまる」
人には言ってたけど
人からは言われたことなかったな
私が人に言ってる言葉は
私が欲しかった言葉なんだ
私が欲しい言葉なんだ
自分で昔から言ってたのに
自分の中の自分の中のもっともっともっと
深い深い深ーーーーいところにある自分は
奥の奥の1番遠いけど1番近くにいる自分は
初めっからわかってたんだ
欲しいものわかってたんだ
なのに自分で与えてあげられてなかったんだ
与えてなかったんだ
なんで気づかなかったんだろう
だからずっと足りなかったんだ
人から貰っても何も信じれなくて
足りない足りないって
自分が自分に与えてないのに
人から与えられて満たされるわけない
もうそろそろ自分を許す時なのか
ずつとずっとずーーーっと前から
SOS出してたのに
自分で気づけなかった気づかなかった
気づかないふりをしてた
わたしはまるがほしかっただけなんだ
ただのまるでよかったんだ
でもやっぱり
足りない足りないもっともっとって
なるんだよなあ
大きいマルをあげられるのは
いつになるかな
年度末
気づけただけ収穫か
いぬどしだもんね。
